初めて会ったのは市場の前だった。
「わぁ、素敵なお花ですね」
振り返ると、旅人装束の女性がいた。
フードから覗かせた無垢な笑顔に、心がときめいた。
「旅の方ですか。よかったら、一つどうぞ」
「え、あの、恋人さんに悪いです」
「恋人? 嗚呼、いないから大丈夫ですよ。家に飾ろうと思ってね」
「あっ、ごめんなさい! 私てっきり…」
「南国から輸入した花ですが、旅の思い出に」
「ありがとう!」
「よかったら神殿も行ってみてください。此処にはない花が沢山咲いていますよ」
「神殿…?」
「プロポーズの名所にもなっているくらいでね」
…結局彼女にプロポーズしたのは、自分ではなかったけれど。