夢のような
眠りながら昔を思い出していた。
ーーあの頃は、まだ旅人だった。
陶器のような白い肌、風にそよぐ柔らかな髪。
穏やかな微笑をたたえた彼に、一瞬心を奪われた。
(こんな人…現実にいるんだ…)
「おかえり。あら、素敵な花束ね」
「ウィアラさん、今日すごい人に会ったんです」
「すごい人?」
「何というか、おとぎ話の王子様みたいな、美しい男の人でした」
「……あー! それ王子よ」
「え?」
「ブヴァール家の三男ね。アンガスっていうのよ。なに、花束貰ったの?」
「旅のお土産にって」
「よかったじゃない。でも、彼と付き合っては駄目よ?」
「え、そ、そんな付き合うっていうあれじゃ…」
「あら、失礼。たまに旅人でいるのよ、王族に惚れる女の子」
「王族は、旅人とは結婚出来ないの」
「帰化しても?」
「そう。帰化しても、元旅人とは駄目なのよ」
「なかなか制限されているんですね」
「まぁ、どこの国でも決まり事はあるでしょう?」
「そうですね」
「それにしても、素敵な人だったなぁ…」
男性とのお付き合いなんて、今まで考えたことがなかったけれど。
「将来の旦那さんも、あんな感じの人がいいな…なんて、私にはまだ早い早い」
花を瓶に飾り、ベッドに潜った。