酔った勢い
いつもなら酔わない量なのに、急に酒がまわってきた。
視界が霞み、足元も覚束ない。
「大丈夫? ふらついてるよ? もう少しで家着くから、ここでいいよ」
「平気だ」
「無理しないでいいから、ね?」
「俺は、お前を護りたい」
「な、何を言ってるの…?」
誰の意思だろう、気が付くと抱きしめていた。
「!?」
途切れ途切れにしか、思考が働かない。
「少しだけ、このままで居させてくれないか」
「…ど、どうしたの?」
耳まで真っ赤にして、相変わらず可愛い。
男に慣れないんだな、旦那がいるのに。
「…何でもない」
…
長いような短いような、よく分からない時間が過ぎた。
「も、もう帰らないと…」
「…。」
腕を緩めると、彼女はするりと抜け出した。
「駄目だよ、アンガス」
「駄目って、何が?」
「他の子にしなよ」
「どうして?」
「私結婚しているもの」
「だから?」