不倫のお話

ワールドネバーランド エルネア王国の二次創作。無断転載禁止。不倫の話です、R18。苦手な方はスルーして下さい。

親友

「いたた…」

ラダの小屋で餌を補充しようと屈んだら、腰に痛みがはしった。


昨日は一日中と言っていいほど抱かれていた。

しかも二人に。


自分の貞操が守れなかった後悔と、二人への愛が一塊となって、心に重くのしかかる。


 「この先どうしたらいいんだろう…」

ため息が出る。

嬉しい反面、悩ましい毎日をこれからも過ごしていくのだろうか。


「この先よりも、まずはラダの世話! でしょ?」

「…カピトリーナ!」

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 カピトリーナは、初めて農場管理会に入った当時の、農場代表だ。

先輩であり、初めて出来た親友でもある。


「珍しいね、いつも感情を出さないあんたが、そんなため息ついちゃって」

「…」

「議長の仕事が大変なの?」

「ううん…」


「リウ、お昼食べに行こう。そんな顔されてたら、あたしまで気が滅入っちゃうよ」

「…」

黙って頷いた。

いつもなら笑って誤魔化していたのに。


家族に言えないことだって、何だって言ってよ!

と親友になる時の約束を思い出していた。


本当にそんな時がくるなんて。



………



「あら、今日も仲良しね。カピトリーナの分はガーブ草抜いておいたからね」

「ウィアラ、ありがと。あの風味はいつまでたっても慣れないね…」


テーブルにラゴステーキが並べられた。

彼女のメニューでは隠し味にガーブ草が入るのだが、カピトリーナはそれが苦手なのだ。


 とろけるような脂ののったラゴステーキは、夏の定番だ。

小型の鉄板の上で、ジュウジュウと音が弾けている。


「やっぱ夏は冷やしたポムワインにラゴで決まりね。んー美味しい!」

「カピトリーナはラゴ大好きだもんね。ん、焼きたて美味しい」


 ラゴステーキを食べ終え、ポムワインのおかわりを注文した。

シュワシュワする発泡酒なだけに、何杯でも飲めてしまう。


ほろ酔いで満足げなカピトリーナが、こちらに体を寄せてきた。


「…で、何があったって?」


話していいのか躊躇ったが、自分も限界だった。


 


 

家族の眠る邸宅で ※R18

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肩にまわされた手が下に降り、胸を優しく撫で始めた。

触られた部分が、痺れそうなほど熱を帯びる。


「んっ…」

「今日はそんなに気持ち良いの?」

「なんか今日変、かも、ごめん、」

「お酒でも飲んだ? 可愛い」


耳元で囁かれ、熱い吐息にも体が反応する。

胸を揉まれながら、耳の裏、首筋にキスをされ、ゾクゾクとした感覚が下へ降りた。

力が抜けそうになり、彼の服へ縋りついた。


「ふっ…ぁっ」

「夫婦になって、何回しても思うけど、リウは綺麗だよ。凄く興奮する」


夫婦という単語で今日の罪を思い出し、その背徳感でさらに下半身が疼いた。

本当に、いけないことなのに。

ズキリとする心の痛みが、かえって性欲を煽るなんて。


乳首をクリクリと円を描くように撫で回され、その度に快感がはしった。


ロニーがクスッと笑った。

「シーツ濡らしちゃってるよ、リウ。お漏らししたの?」

「えっ嘘…」


慌てて下を見ると、自分の愛液でシーツに染みを作っていた。

こんなことは初めてだ。

あまりの恥ずかしさにうつむいた。


「感度抜群だね」

「ご、ごめん」

「じゃあ、俺の前で、自分で下着脱いでくれる?」


うつむいたまま頷き、ロニーの前に立って、下着を脱いだ。

顔から火が出そうなほど、恥ずかしい。

白いレースのついたショーツには、朝の染みに加わって、滴った愛液が糸を引いた。

「…!」

「変態さんだね」


そう言うとロニーは手を伸ばし、立たせたまま膣の入り口付近をゆるゆると撫で始めた。


「はっあ…っ」


緩く与えられる刺激に、物足りなさを感じる。

欲しい、と頭が命じているような。


「駄目だよ、濡らしたからお仕置き」

「っ…」


中に挿れてくれないなら、前でもいい。

気持ち良いところを擦ってほしい。

…欲しい。

知らず知らずのうちに、腰が動きそうになる。

ロニーは目を細め、手を止めることなく微笑んだ。


「変態さん、まだ懲りないのかな? お漏らしいっぱいしてるけど」


滴る液体が、床に一つ二つと染みを作る。

これ以上されたら、頭がおかしくなりそうだ。

「ね、もう…」

懇願すると、ロニーは困ったように笑って立ち上がった。

「リウには敵わないなぁ」


ぬちゅっという音をたてて彼の指が離れ、その先端を美味しそうに舐める。

「じゃあ、指挿れるよ?」


そう言うと、唾液のついた指先が膣より後ろに至った。


「!?」

「ごめん、今日可愛いすぎるからもっと苛めたくて」


ツプッという音が聞こえ、腸の中に彼の指が入っていく。

「えっあっ…!?」

「リウがいけないんだよ」


下半身の疼きが残る中、粘膜の引き伸ばされる感覚と、排泄感が同時に押し寄せる。

言いようのない感覚に耐え切れず、彼の体にもたれかかった。


「なっ…んで」

「少しずつ、ね」


クチュ…クチュ…


苦しいような、熱いような。

細くしなやかな指が、肛門からゆっくりと抜き差しされる。


「はっ…はっ…」

「すごいよ、指を締め付けてくる。可愛い」


朝のアレのせいなのか、今日はおかしい。


普段排泄するような所を、夫の指で犯されているという痴態に、いつの間にか興奮し始めていた。


苦しいような感覚が快感に変わるまで、そう時間はかからなかった。


「んっ…あっ」

「リウは変態さんだからね、苛められるの好きだもんね」

「ち、がっ…んぁっ」


指を二本に増やされ、思わず仰け反った。

ジュプジュプといやらしい音が部屋に響く。


「お尻の穴でも感じているのに、どこが変態じゃないの?」

「あっああっ…」


こんなにされて、悦んでいる自分がいる。

こんな筈じゃなかったのに。


足がガクガクと震え、また一つ床に染みを作った。

見兼ねた彼に、ベッドの上に導かれた。


「後ろを向いて手をついて」

「ん…」


ようやく、欲しかったものがもらえる。

熱を持て余して、もうそれしか考えられない。

しかし充てがわれたのは先ほどまで弄られていた場所で、驚きに目を見開いた。


グ…チュッ


文句を言う暇もなく、腸壁が引き伸ばされた。

「…っあ!」

「静かにしないと、マリン達が起きちゃうよ」


そういう問題じゃない、と言いかけたが、押し寄せる圧迫感に口を閉ざさざるをえなかった。

「…ッ」


「リウの全てが欲しいって、前から思ってたけど我慢していたんだ。

けど、最近可愛いすぎてだめだった」


「ロ、ニー…」


「愛してるよ、リウ。全部欲しい」


低い声で耳元で囁かれ、鼓動が早くなった。

それと同時に、太いものが奥まで入ってきた。

いつもよりもずっと強い刺激に、脳が追いつかない。


それがゆっくり抜かれると、信じられないほどの快感をもたらした。


排泄欲を満たす快感を、性的快感と混同するのだろう。もしかしたら回路が一緒なのかもしれない。


電流の流れたような感覚が体中に行き渡る。


「…!」

「気持ち良くなってきたみたいだね。俺も、凄く気持ちいい」


グチュッヌチュッ


ペースが上がり、腸壁を擦られる度に喘ぎ声が漏れた。


「んっあっ…ああっ!」

「変態なリウも大好きだよ」


腰をパンパンと打ち付けられ、体がビクビクと震えた。

指を何本も膣にも挿れられ、グチャグチャに掻き回される。


ヌプッグチュッグチュッ


前後同時に抜き差しされると、ボタボタと中から雫が溢れた。


「ああっ、だ、めッ…!」

「また、お漏らし、しちゃったね」

「も、ぁっ、あ、ああああっ!!」

「俺も…ッ」


彼のものが膨張して熱く脈打ち、それも刺激となった。

視界が白飛びしそうなほどイッてしまう。



………



「こっちの初めても、もらっちゃったね」

「もう…」


口を尖らせると、ロニーは薄青色の瞳を細め、クスッと笑った。

優しく頭を撫でられた。


「嫌だった?」

「びっくりしたよ…」

「ごめんね、驚かせて」

「ううん」

「さっきも言ったけれど、何て言うか、我慢出来なかった。

リウ、最近変わったことあった? 俺が気づいてあげられてなかった?」


いきなりのことで、一瞬、ドキリとした。


「な、何もないよ」

「そっか…。今まで傍にいてくれていたから、何か日常的になっちゃったのかな。

ずっと好きだったけれど、もっと好きになった気がする。愛してるよ」

「ロニー…」


愛されれば愛されるほど、深い深い闇に堕ちてしまったような気がした。


ロニーの夜

その夜のことだった。

ベッドでうとうとしていると、部屋のドアが開いた。


「…リウ」

「ロニー?」

「よかった、起きてた」

「どうしたの?」


ベッドから身を起こすと、ロニーが隣に座った。


 「最近、何だか色っぽいよね」

「…え?」


肩に手をまわされ、顎を持ち上げられた。


「今日帰り道に見た時、何だかドキッとしちゃってさ」

「…!」

「昨日もしたけど…今日もしない?」


薄青色の瞳に見つめられ、動けなくなる。


 ロニーを見つめたまま、今朝からのアレを思い出し、顔が熱くなった。


「…リウ。そんな顔してると、我慢出来ないよ」


いつものように優しく唇を重ねられただけなのに、身体がびくりと反応した。


「は…ぁっ」


どうしよう。

やけに身体が熱い。


 

帰り道

行為を終えても、終わったという感覚がなかった。

服を着て身なりを整えると、手を繋ぎ、額にキスをした。


「そろそろ、戻らないとまずいな」

「うん…」


気づけば西日が差していた。

照らされた壁がオレンジ色に染まっている。


名残惜しいが、致し方ない。


 次なんて、あるのだろうか。


恋人にもなれないこの関係は、いつ終わってもおかしくない。

約束でも取り付けないと、気が狂ってしまいそうだ。


「二日後の、評議会の後に」

「うん」


何度目のキスだろう、最後にそっと口付けした。


 

………



火照った顔を手で冷やしながら、帰路についた。


二人を好きなんて許されないことなのに、いつからかアンガスを見ると胸が高鳴ってしまうようになった。


凛々しくて、生真面目な王子。

毎年成人式の後には、彼の後ろに長蛇の列が出来るほどの人気がある。


 そんな彼が、生涯をかけて愛を誓ってくれた。

決して叶わない愛を。


ロニーには、裏切ったことへの罪悪感がある。子供達にも。


しかし、恋い慕う気持ちに歯止めがきかなかった。


燃えるような彼の視線に、焼かれてしまったに違いない。


 夕焼け空を眺めながら歩いていると、前方から子供達が走ってきた。


「ママー! おしごとおつかれさま!」

「おかえりー!」

「マリンもスノウも、迎えに来てくれたの?」

「うん! みてみて、ルリオオツノムシとったの」

「あたしはボワのみ!」

「たくさん遊べた? 虫さんはお家に飾っておこっか。ボワの実は後で一緒にジャム作ろうね」

わいわいとはしゃぐ子供達の頭を撫でた。


「…リウ」


振り返ると、ロニーが居た。

思わずドキリとする。


「あ…おかえりなさい」


 「ただいま。って言っても、まだ家に着いてないけどね。さ、皆で帰ろうか」


(よかった…気付かれていなさそう)


ホッと胸を撫で下ろす。

スノウと手をつなぎ、もう片方でロニーと手を繋いだ。

マリンはロニーの隣を歩く。


いつもの、帰り道。


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誰も居ない邸宅で ※R18


誰も居ない城壁の邸宅に、水音が響く。

「っ…ふ、ぅ」

艶めいた声を混じらせながら喘ぐリウさんは、息をのむほどに美しい。


カーテンのない窓辺から光が差し込む。

華奢な身体とは思えないほど豊満な胸があり、服を脱がしたい欲に駆られる。


唇を離すと、唾液が銀糸のように引かれた。


「キスだけで、感じるんだな。いやらしい人だ」


耳まで真っ赤にして、ふるふると首を振る姿が愛らしい。

11歳とは思えないほどの可愛さだ。もっと苛めたくなってしまう。


耳の裏へ口づけし、首、鎖骨へと降りていく。

唇が触れるたびにヒクリと身体を震わせ、熱い吐息が漏れた。

「はっ…ぁ」


服の上から胸を揉みしだく。

そのうちに胸の突起が目立つようになり、そこを抓ると、彼女の身体が大きく身体が仰け反った。

「んっ…!」

「ここが良いのか?」

「ねっ…だめ」

「駄目じゃないだろう」


そのまま服の上から、突起をしゃぶるように舐めた。

「あ…あっ」

「痛い方が気持ち良さそうだな」

「やぁっ」


片方の乳首をねっとりと唾液で濡らし、もう片方は抓りあげる。

彼女の身体はさらに火照り、快感に震えた。

遮る手を軽く押さえ、乳首を甘噛みすると、小さな嬌声が聞こえた。


好きな人を抱くことなんて初めてだ。

こんなにも愛おしく、加虐心が煽られる行為なのだと知った。


真っ白なブラウスのボタンを一つ一つ外していき、胸を露わにした。

白い肢体は人形のように美しく、紅潮した顔がまたそそられる。

スカートも脱がすと、レースのついた白い下着だけとなった。


「美しいな」

「…恥ずかしいよ」

「この時間だけは俺のものでいてくれないか」

「うん。お願い」


身体が重なる。


お互いの熱が伝わり、高鳴る胸の音が耳に響いた。


下着に触れると、しっとりとした感触があった。

「濡れているな」

「そんなの言わなっ…あっ」 


言い終える前に下着の上から擦る。

乳首を口に含み、回すように舌で撫でながら、クリトリスを執拗に撫でた。

「は…あっ」


撫でる度に下着がどんどん濡れていき、身体が仰け反る。

快感に潤んだ瞳はアメジストのようだ。

己の手で感じているのだと思うと、心が震えた。


「どうしてほしい?」

「どうしてって…んっ」

「このままでいいのか?」


やだやだ、と子供のように首を振る彼女。


「言わなきゃ分からないだろう」

「…し、て」 

「聞こえないな」

「…挿れて、ほしい」


掠れた小さな声。

苛められて、こんなに濡らしているくせに。

ますます加虐心が煽られる。


「もっと、大きな声じゃないと」

「挿れて、ください」

目をぎゅっと瞑って絞り出された声に、興奮しない男がいるのだろうか。


彼女の下着をずらすと、透明な液体が糸を引いた。


「身体は正直だな」

「やっ…見ないで」

「こんな卑猥な姿を見せつけておいて」


俺自身のモノも限界まで腫脹していた。

ボクサーパンツを脱ぎ捨てると、彼女がこちらを見つめてきた。


「すごい…」

「うん? あいつのは小さかったのか?」

「いや、そういうあれじゃ」

「まあ他人より大きいと言われたことは何度かあるがな」


彼女の秘部に指を1本挿れる。

ぐちゅぐちゅと淫靡な音を立てると、恥ずかしそうに顔を横に向けた。

指の数を増やすと、無言で身体をヒクつかせる。

中からはぬるぬるとした液体がしきりに溢れた。

俺自身の先からも、透明な露が流れ落ちた。


「痛かったら、言ってくれ」

「…うん」


先端を膣の入り口にあてがうと、ゆっくりと中に進めた。

ぬるりとした感触と温かい粘膜が包み込み、吸い付いて離さない。

指先などよりもはるかに敏感なそれは、リウさんの感触をさらに欲した。


我慢出来そうにない。


初めはゆっくり動いていたが、だんだんと腰の動きが早くなる。


ぬぢゅっぬぢゅっぐちゅっ


粘液質な水音がさらに熱を上げる。


「んっ、あッ」


深く突く度にあられもない声をあげるリウさん。

開いた口からはだらしなく唾液が零れ、大き過ぎる快感にシーツを掴んでいた。


「最奥が好きなんだな」

「待って、だめっ…あああッ」

「何回もイくと良い」


口で口を塞ぐと、最奥を抉るように思いきり腰を打ち付けた。

「ーーー!!」

ビクンビクンと身体が仰け反り、くぐもった嬌声が喉の奥で聞こえる。

それに構わず、何度も何度も腰を振り、その度に彼女は身体を震わせた。


ぶじゅっぐじゅっぬちっぬちゅっ


そのうちに自分も限界を迎えそうになり、口を離した。


「はっ…すまん、俺も、そろそろ…」

「ぅ、あっん」


コクリと頷くリウさんの髪を愛おしげに撫でた。

互いの汗で髪まで濡れている。

彼女の肩に顔を埋め、一心不乱に腰を振る。


「一緒に…ッ」

「んっぁッ…ああああああッ!」

「はぁっはっ……!」


ドクドクと全身が脈打つ。

熱いものが先から放たれ、リウさんの中に注ぎ込まれた。


「あっ…すまない!」

「うん、いいの。行かないで」

重なった身体を離そうとすると、彼女から制された。

細い腕が背中にまわされ、抱きしめられた。


「どうしたらいいか、私にも分からないの。二人を想うなんて、可笑しいよね」

「俺は、盗るつもりはないんだ。リウさんには幸せに生きてほしい。

だが、ほんの少しだけ、時間を俺にもくれないか」


そう、背徳感が無いわけではない。

だが、それが快感に繋がるかというと、そうではない。

純粋に、愛しているから行為をする。


この先が不安なのは、彼女も俺も同じだった。

それは罪を負う者の宿命だろう。


柔らかな身体を、強く抱き締めた。


「私ばかり、いい思いをしている気がする」

「ロニーには申し訳ないが…。リウさんが幸せなら、俺はどうなってもいい」

「ありがとう、アンガス」


共に堕ちても、天使は天使のままだった。

汗ばんだ顔に儚げな笑みを浮かべるリウさんに、俺は再度口付けた。


堕ちていく

「私の間違いじゃなければ、きっと、私のこと好きだったんだよね?」


「…ああ。俺は今でも好きだ」


「…うん。知ってた」


「何度も王家に背こうと思っていた。結婚した時は、これで諦めがつくと思って、ほっとしたものだ」

「そっか、だからあの時…真っ先にお祝いしてくれてたもんね」


一息つくと、彼女はこちらを真っ直ぐ見つめてきた。


「嫌いじゃないよ」


「…リウさん」


「でもね、この気持ちをどうしたらいいのか、分からないの」


浮かんだ涙が、ぽろり、ぽろりと落ちた。


「好きって言ったら、貴方はどうなるの? アンガスは、もっと苦しむでしょ?」


「…なら、好きと言わないでくれないか」


アメジスト色の瞳が、揺れた。


「俺が好きなだけなんだ。好きと言わないでくれ。…それなら、不倫という罪を背負う必要もないだろう?」

「…そんなの、」

「狡いか? 嫌いじゃない、なんて台詞の方がよっぽど狡いだろう?」

「そうやって、すぐ言いくるめて…」


口を尖らせる彼女の前で、右膝をついた。


「!」



「リウさん、愛している。昔から今まで、ずっと。

これからも死ぬまで愛し続けると誓う」



「アンガス…」


「だが、好きなのは俺だ。俺が好きなだけなんだ」



「…じゃあ、ずっと好きでいて下さい」



驚いて、思わず顔を上げた。


 少し顔を赤らめ、彼女は目を逸らした。

「そ、そんな見ないでよ」

「…まったく。これだから困る」


リウさんを優しく抱き寄せた。


「悪いが、本当に我慢出来そうにない」

「え、何のこと!?」


そのまま脚の裏に手を添えて抱き抱え、ベッドまで向かった。


 リウさんは奇特な人だ、と思う。


嫌いじゃないと言うことで、自分よりも相手が傷つくのを守ろうとする。


好きと言っても、嫌いと言っても、結果は似たようなものだ。


優しい人なのだろう。

自分の感情を押し殺し、相手を優先する。


 それに比べて俺はどうだろう。


酔った勢いで襲ってしまったとはいえ、その後も理性がきかずに自分勝手な行動ばかりだ。


罪を背負うことになる彼女の気持ちなど、何も考えていなかった。


「本当に、すまなかったな」

「ううん。ありがとう」


 ベッドに彼女を横たえながら、訊き返す。

「ありがとうって…」

「何年も想い続けてくれたんだよね。純粋に、嬉しいよ」


微笑むリウさんに、心臓が高鳴った。


「…俺は感情をぶつけて、迷惑をかけてしまったが」

彼女はふふ、と笑って、手を伸ばすと、俺の髪を撫でた。

 

「辛かったよね」

「……」

「好きな人と結婚出来なくて、それでも何処かしらで会う日々が続いたんだよね? 想いを吐き出す場所も無くて、独りで耐えていたんでしょう?」

「…まいったな。まるで俺の心の内を読まれたようだ」


そっと彼女の手を取り、両手で包み込んだ。

 

黒紫の彼女の瞳が、俺を捉えた。

もう、涙で濡れていなかった。

彼女は繋いだ手をぎゅっと握りしめて、にっこりと笑った。


「罪を背負うなら、一緒に…ね?」


「リウさん…。リウ、愛している」


誠実という翼が折れ、堕ちていく。


唇を重ねた。


 

  

嫌いじゃない

握りしめた転移石に魔力を込め、城壁の邸宅へ瞬間移動した。

「!?」

「…リウさん」

「な…どういうこと!?」

「すまない。もう限界なんだ。許せとは言わない」


彼女の後頭部を掴み、強引に唇を奪った。

息をする暇も与えない。

貪るように口の中を犯す。


 「待っ…ん、」

もがく彼女の両腕を片手で纏め、壁際に押さえつけた。


もう涙なんて見えない。


「は、すまない、な…」

「なに、なんで、こんな、」


紡がれる言葉は、唇で塞いだ。


 「んっ…あっ…は、ぅ、」

「そんな…顔して。煽っているのか?」

「ち、ちが、」

「何が違うって? 旦那以外の男からキスされて、何も抵抗しないのに?」

「だってそれは、貴方が押さえつけているからでしょ!?」 

「本気で嫌なら、相手の舌ぐらい噛み切るだろ?」


 言葉に詰まった彼女は唇を噛みしめると、目線を下に落とした。

ぽつりぽつりと、涙を浮かべながら、話し出す。

「…嫌いじゃ、ないから」

「……!」



押さえていた手が、緩んだ。