ルカ
陣痛がきてからの時間は飛ぶように過ぎた。二人産んでいても慣れはしない。毎回、痛みで気が遠くなる。
気がつくと、産声が邸宅に響いていた。
「お母さん、頑張りましたね。元気な男の子ですよ」
奏女のヴァレリアが、取り上げてくれた赤ちゃんをそっと産衣に包んでくれた。
疲れ切った体で我が子を抱く。群青色の瞳がこちらを不思議そうに見つめた。
嗚呼、やはりーー。
心の中で色々な思いが混ざり合い、涙が一筋流れた。
「リウ、頑張ったね。大丈夫?」
「うん…」
ロニーは汗ばんだ額に張り付いた髪を整え、涙をそっと拭ってくれた。
「名前は、どうする?」
再度赤子の瞳を見つめた。
「…ルカ」
迷いは、なかった。
「ルカ…いい名前だね。またリウに髪色似ちゃったなぁ」
「髪の遺伝子だけ強いのかもね」
「目の色は、俺とリウの間の色だね」
「うん」
ロニー、本当にごめんなさい。
心の中で、何度目かわからない謝罪をした。
ドアがバタンと勢いよく開き、二つの小さな影が駆け込んできた。
「やった! 弟だ!」
「かわいい…!」
ガッツポーズで喜ぶマリンと、赤子に感動するスノウ。
「名前はルカ。光っていう意味なんだよ」
へぇー、と納得するスノウの横で、マリンはルカの頬をちょんちょんとつついていた。
「早く大きくならないかなぁ。一緒に探索したい」
「ふふ、今生まれたばっかりじゃない」
マリンにとって、妹が生まれた時とはまた違う感覚なのだろう。同性の兄弟を以前から望んでいただけに、上機嫌でルカを見つめていた。
スノウは自分より年下の存在が初めて出来たことに、驚きと関心を寄せているようだった。そっとルカと手を繋いでは、にこにことしていた。
「では、私はこれで」
ヴァレリアが部屋を後にした。
「ロニー、ずっと付いていてくれてありがとう」
「俺に出来ることはこれぐらいだからね。リウ、少し休む? 子供達は俺がみておくよ」
「うん、そうしてもらえると助かる」
3人と1人が部屋から居なくなり、静寂が訪れると、急に眠気が襲ってきた。
皆に愛され、産まれてきた子。
絶対に幸せにしなければ、と誓いながら眠りについた。