不倫のお話

ワールドネバーランド エルネア王国の二次創作。無断転載禁止。不倫の話です、R18。苦手な方はスルーして下さい。

父親

アンガスの驚いた顔を見る人は、世の中にどのくらいいるのだろう。

「本当に…」
「多分」
「そうか…」
彼は顔を上げ、天を仰いだ。
泣いているのか、笑っているのか、表情は見えなかった。

「シズニよ、皮肉なものだな…」

元奏士は、目を閉じて手を合わせた。



アンガスは祈りを終え、木漏れ日を眺めていた。
答えを待つのが、恐くなった。

「…今はどういう気持ちなの?」

「もしそうだとしたら、嬉しい」

目線を戻した彼は、心の底から嬉しそうな顔をしていた。

父親は、ロニーだ」
「…うん」
「ずっと、ロニーだ」
「……」
父親として一生関わることはないだろう、と呟いた。

「だが、その子の幸せは俺の幸せだ」

陽だまりのような微笑みに、返す言葉が見つからない。
目に溜まる涙が流れないよう、必死で堪えた。

「帰り支度をしよう。歩けるか?」
「うん」
膝についた土を払い、立ち上がった。
「具合は?」
「落ち着いた、ありがとう」

頭をぽんぽんと撫でられた。
「俺のことは心配するな。その子と会える日を、楽しみにしている」
「うん…わかった」

二人で歩く道が、もっと長かったらいいのにと思った。

「名前は考えているのか?」
「ううん、まだ」 
「そうか…そうだな」

眉をひそめ、真剣に考え始める彼を見て、やはり父親なのだなと思った。

「この子には幸せになってほしい。俺とリウさんが結ばれなかったような、辛い思いはさせたくない」
「そうだね」
「そんな願いを込めて、ルカ、とはどうだろうか」
「ルカ…光という意味だね。良い名前」

行く先に幸あらんことを。

過ちも不幸も、繰り返さない為に。



第1章 不倫のお話 end