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不倫のお話

ワールドネバーランド エルネア王国の二次創作。無断転載禁止。不倫の話です、R18。苦手な方はスルーして下さい。

堕ちていく

「私の間違いじゃなければ、きっと、私のこと好きだったんだよね?」


「…ああ。俺は今でも好きだ」


「…うん。知ってた」


「何度も王家に背こうと思っていた。結婚した時は、これで諦めがつくと思って、ほっとしたものだ」

「そっか、だからあの時…真っ先にお祝いしてくれてたもんね」


一息つくと、彼女はこちらを真っ直ぐ見つめてきた。


「嫌いじゃないよ」


「…リウさん」


「でもね、この気持ちをどうしたらいいのか、分からないの」


浮かんだ涙が、ぽろり、ぽろりと落ちた。


「好きって言ったら、貴方はどうなるの? アンガスは、もっと苦しむでしょ?」


「…なら、好きと言わないでくれないか」


アメジスト色の瞳が、揺れた。


「俺が好きなだけなんだ。好きと言わないでくれ。…それなら、不倫という罪を背負う必要もないだろう?」

「…そんなの、」

「狡いか? 嫌いじゃない、なんて台詞の方がよっぽど狡いだろう?」

「そうやって、すぐ言いくるめて…」


口を尖らせる彼女の前で、右膝をついた。


「!」



「リウさん、愛している。昔から今まで、ずっと。

これからも死ぬまで愛し続けると誓う」



「アンガス…」


「だが、好きなのは俺だ。俺が好きなだけなんだ」



「…じゃあ、ずっと好きでいて下さい」



驚いて、思わず顔を上げた。


 少し顔を赤らめ、彼女は目を逸らした。

「そ、そんな見ないでよ」

「…まったく。これだから困る」


リウさんを優しく抱き寄せた。


「悪いが、本当に我慢出来そうにない」

「え、何のこと!?」


そのまま脚の裏に手を添えて抱き抱え、ベッドまで向かった。


 リウさんは奇特な人だ、と思う。


嫌いじゃないと言うことで、自分よりも相手が傷つくのを守ろうとする。


好きと言っても、嫌いと言っても、結果は似たようなものだ。


優しい人なのだろう。

自分の感情を押し殺し、相手を優先する。


 それに比べて俺はどうだろう。


酔った勢いで襲ってしまったとはいえ、その後も理性がきかずに自分勝手な行動ばかりだ。


罪を背負うことになる彼女の気持ちなど、何も考えていなかった。


「本当に、すまなかったな」

「ううん。ありがとう」


 ベッドに彼女を横たえながら、訊き返す。

「ありがとうって…」

「何年も想い続けてくれたんだよね。純粋に、嬉しいよ」


微笑むリウさんに、心臓が高鳴った。


「…俺は感情をぶつけて、迷惑をかけてしまったが」

彼女はふふ、と笑って、手を伸ばすと、俺の髪を撫でた。

 

「辛かったよね」

「……」

「好きな人と結婚出来なくて、それでも何処かしらで会う日々が続いたんだよね? 想いを吐き出す場所も無くて、独りで耐えていたんでしょう?」

「…まいったな。まるで俺の心の内を読まれたようだ」


そっと彼女の手を取り、両手で包み込んだ。

 

黒紫の彼女の瞳が、俺を捉えた。

もう、涙で濡れていなかった。

彼女は繋いだ手をぎゅっと握りしめて、にっこりと笑った。


「罪を背負うなら、一緒に…ね?」


「リウさん…。リウ、愛している」


誠実という翼が折れ、堕ちていく。


唇を重ねた。