夏の出来事
夏が始まった。
暑くて、外に出るのが億劫になる。
「おはようアンガス」
「お早うリウさん」
「ご機嫌だね。なにかいい事でもあったの?」
「ああ、大した内容ではないけれどね」
…前言撤回。
「これから探索?」
「ああ。夏になるとペピッサが大量発生するんだ」
「もうそんな時期ね…」
「リウさんは昼から評議会?」
「うん。ペピの種足りなくなっちゃったから、探索一緒に行こうかな…。いい?」
「もちろん」
何だ、今日はとても運が良い。
やはり暑かろうと寒かろうと、外には出るべきだ。
午前中いっぱい、リウさんと探索をした。
久しぶりに長時間一緒に居ることができた。
この時間は、誰にも譲れない。
夫婦になると、一緒に探索することもたくさんあるのだろうな。
朝晩を共にして、食卓を囲んで。
そう思うと、心臓が鈍く痛んだ。
想えば想うほど虚しい。
こんなに近くにいるのに。
手を伸ばせば届く距離が、こんなにも遠いのか。
「…眠れん」
くだらないことを考えていたら、目が冴えてしまった。
窓を開けると、夏の夜の匂いがした。
枯葉のような形の虫が、鳴き声を響かせている。
「…風呂でも行くか」
夜2刻なら誰も居るまい。