炎
本の片付けなどと言いくるめて、下心が無かった訳ではない。
反省はしているが、会いたいのもまた事実だ。
そう、揺るぎない事実なのだ。
一度でも触れてしまったら。
もう止めることができない。
「まるで炎だな」
恋い焦がれるとはよく言ったものだ。
燻っていた小さな火の粉は、飛散し、燃え移り、やがて山火事にまで至る。
雨でも消し止めることはできまい。
尽きることなく燃焼し続け、その後には何も残らない。
あらゆる物を呑み込むが如く、焼き尽くす。
……
それから暫く、リウさんと邸宅で顔を合わせるようになった。
もうあんなことは二度としないが、会えるだけで心が満たされた。
我儘でしかないのは分かっているが、何年と耐えてきたのだ。
会うくらいは…という思いが自分の何処かにあったのだろう。