償いなんて
気づくと、彼女が半分覆い被さるような体勢になっていた。
体温を感じて再度昨夜を思い出し、鼓動が早くなった。
「あ…わっ! ご、ごめんなさい!」
「怪我はないか?」
「う、うん」
彼女は慌てて顔を背け、服についた埃を払った。
「そ、そういえば。何故この邸宅に? また引っ越すのか?」
「ううん。テレーゼ様に、定期的なお掃除を頼まれてるの」
「姉様が?」
「持ち主は王家だけど、普段忙しくて来れないからって。バイト代も出てるけどね」
「成る程。邪魔をしてすまなかったな」
「いや、そんなことないよ。仕事の合間に少しずつやってるだけだから」
「そうか…なら、手伝わせてくれないか? せめてもの償いをしたい」
「ええっ! いいよいいよ、ただのバイトだもの」
「じゃあ散乱した本の片付けだけでもさせてくれ」
「その……うん、わかった」