二日酔い
あの後、どうやって帰ったのか覚えていない。
がばっと起きると、カーテンから朝の光が射し込んでいた。
「…夢…か…?」
服に目をやると、昨夜雨に濡れたままであった。
吐息も酒臭い。おまけに酷い頭痛がする。
「…最、悪だ、」
苦笑しか出てこなかった。
抱き締めた感覚も、キスの感触も、生々しく思い出される。
「は、…何をやっているんだ俺は…」
人間として下劣だ。
よりにもよって、人妻を…自分が護りたいと思ってきた人を、襲うなんて。
「…支離滅裂だな」
どれだけ謝ればいいのだろう。
一生嫌悪され続けるかもしれない。
もう、彼女の笑顔を見る権利はないのだろうか。
重い溜息が混じる。
「…早く、謝罪を、しなければ」
響くような頭痛を抱えつつ服を着替え、導きの蝶を小瓶から取り出した。
蝶の後を追い、噴水通りを抜け、牧場通りに辿り着いた。そのまま城壁の邸宅へ入る。
「…城壁の邸宅?」
現在、ここは誰も住んでいないはずだ。
蝶は階段の前でくるりと回ると、小さな光となって消えた。